2026年最初の研究会
1月9日(金)
東京都美術館スタジオにて開催しました。
アーティストトーク
1月の講師:委員 金谷ちぐさ
私は、若いころは人物を描いていました。女流画家協会展には3回出品しています。その後結婚して絵とは縁のない生活をしていましたが、子育てが一段落して自分は一体何をやりたいのだろうと考えた時やっぱり絵に戻りました。実に15年ぶりでした。
再スタートしてからは、身近にある気に入った静物を並べて描くようになりました。地味な絵でしたが、千葉の県展で会員になり、やがて女流画家協会展に再び出品、そして新たに春陽展にも出品するようになり、現在に至ります。

今思えば長いブランクは決してマイナスではなかったと思います。身近なところにこそ美しさがあることに気が付きました。それ以来、物を一つ一つ丁寧に見て、自分自身の心に合うものを求めて描いてきました。流木、古い瓶、貝、枯れた草花、それらにまといつく布などです。リアルに描くのは面白かったです。だんだん本物に近づいていく喜びがありました。でも実は私は、いつも迷っていたのです。物を通していったい何を描きたいのか?ただ正確に写すだけなら写真があるじゃないですか・・・
そんなある時、冬の光が部屋の中に置いてあるモチーフまで長く差し込んだ時、私の描こうとしていたものは光だったのだ、と気が付いたのです。物は光によって見えるもの、光がなければ真っ暗で何も見えないのです。光を意識することにより自分と物とのつながりがはっきりするようになりました。それ以来光は私の思いを伝える道筋になったのです。
また、同時期にテンペラと油彩の混合技法を習得したことも大きな収穫でした。その技法により光の一筋一筋を描くことができるようになりました。混合技法は、油絵具とテンペラ絵具(私の場合は白だけですが)を交互に塗り重ねて明暗を表現する技法です。油絵具は薄く重ねるので絵具が盛り上がらずに輝くような明るさと深い奥行が出せます。暗い色の下地の上に白い線で光を一筋一筋描いていく、この細かい手仕事が私はたまらなく好きで、自分に合った技法に巡り合えたと思っています。
描くときは、あえて感情を抑えて、冷たい視線で描こうと心掛けています。でもそれは単に光の現象の再現ではありません。自分が考えている光のために、物が作り出す場面や状況を設定し、絵の中で強弱をつけて、私なりの写実につなげようとしています。
絵を描くことは、自分の感動を人に伝える手段だと思います。
そしてその思いが深いものであればあるほど見ている人と気持ちがつながれる。そう信じて、これからも迷いながらの自分探しの旅を続けようと思います。

2025年第78回女流画家協会展
「光降る時」120F 金谷ちぐさ
posted by joryugakakyokai at 21:12|
研究部